運転資金の融資はどこで受けるべき?融資以外の調達方法も紹介
会社を続けていくためには、諸経費の支払いが必要です。諸経費の支払いのために必要な資金が運転資金です。
何か目的があって資金調達する設備資金と違い、運転資金は日常的に発生し、事業継続のため不可欠な資金です。
運転資金がショート、返済不能になることで不渡りが起き、倒産が一気に近づいてしまいます。
適切なタイミングで運転資金を調達できれば事業が安定します。
今回は運転資金の融資をどのように受けるべきなのか、また、融資以外の運転資金調達法についても解説します。融資以外の方法を知っておくことで、融資が受けられない場合も緊急時の対処ができます。
運転資金の種類
まず一言で「運転資金」といってもさまざまな種類があることを知っておきましょう。運転資金の種類について解説します。
経常運転資金
一般的に言われる運転資金はこれに該当します。家賃、光熱費の支払い、仕入れ、人件費などが該当します。
固定的な費用として、毎月一定額を支払っていかなければならない運転資金になります。
増加運転資金
事業を拡大していくときには、新規顧客開拓や、新しい仕事を受注します。そのために、これまでにかからなかった費用が発生します。
増加運転資金はこのような場合に、経常運転資金以外にかかる運転資金を指します。
減少運転資金
増加運転資金とは逆に事業を縮小して行く際にかかる費用です。事業縮小局面では、事業が好調だった時にかかる運転資金が余分にのしかかります。
売上が半分になっても人件費や光熱費は半分に減らせません。当然最低費用(基本料金)があるわけで、その部分が負担になります。
また店をたたむ場合の閉店費用や撤去費用なども減少運転資金に含まれます。
季節運転資金
毎年ある季節に発生する運転資金です。従業員のボーナス、さらに季節性商品の仕入れなども該当します。
お正月、節分、卒業式、お花見、子どもの日、梅雨、夏休み、お盆、ハロウィン、紅葉、クリスマス・・・、「酒が飲めるぞ~」の歌ではありませんが、毎月何かしら季節運転資金が発生するかもしれません。
設備未払金決済運転資金
機械や車両の購入、新設備導入などは設備資金です。しかし、何らかの事情で半年以上設備資金の返済ができなくなると、この設備未払金決済運転資金になります。設備資金から未払い分のみ運転資金に変わります。
設備未払金決済運転資金を支払わなければならない状況は、すでに設備資金の返済が滞っているので、非常に危機的な経営状態にあるといえます。
運転資金の内訳
運転資金の種類は以上になりますが、運転資金には大きく分けて以下2つの内訳があります。これらの違いについてご理解ください。
固定費
売上の増減や稼働率にかかわらず発生する運転資金です。
- 家賃
- 従業員の給与(基本給)
- 電気やガスの基本料金
- 何かのリース料
などが該当します。
売上がゼロでもこれらの固定費は支払わなければなりません。
変動費
売上や工場の稼働率などによって変化する運転資金です。
- 材料費(仕入れ)
- 運搬費
- 人件費(時間外労働)
- 光熱費の基本料金以外の従量部分
- 派遣社員の人件費
などが該当します。忙しい時にはこれらの変動費が大きく増えます。
変動費は売上や稼働が減れば少なくなっていきますが、当然そうした場合には運転資金をねん出する余力もなくなってしまいます。
運転資金と設備資金の違い
運転資金と設備資金には大きな違いがあります。運転資金は日常的な事業継続に必要な資金ですが、設備資金は資産購入のための資金です。
機械、車両、設備、土地、建物、システムなどインフラ整備にかかる費用が設備資金です。設備資金は毎月の売上から返済能力を見るだけではなく、設備によってどのくらい売上が増え返済できるようになるかも考慮されます。
個人タクシーの方は、月商の数倍~10倍のタクシーを設備資金として借りられるのも、運転資金とは異なる審査基準があるからです(個人タクシーの場合運転資金は借りられて月商の1か月分です)。
運転資金の調達を考えるべきケース
売上を速やかに回収し、キャッシュとして資金化できていれば、運転資金を新たに調達しなくても回せます。
しかし、運転資金を別途調達しなければならないケースがありますので、押さえておきましょう。
つなぎ資金
建設業などの場合、仕事を受注しても報酬を受け取れるのは納品後、検品、検収が完了してからです。しかし、受注した仕事の仕掛中でも、人件費、光熱費等はかかります。
原材料の仕入れも必要です。実際に仕事が完了し、売上を売掛金として計上し現金として回収できるまで、当座をしのぐ資金が必要になります。
そこで「つなぎ資金」として資金調達しなければなりません。
事業拡大
今までの経営から一歩踏み込んで事業拡大する場合、新規スタッフの人件費、新しい事務所、工場の家賃、新規に稼働する工場や事務所の光熱費などが発生します。
事業拡大から売上増に至りキャッシュが増えるまでには時間がかかります。その間は、売上ではなく、運転資金を調達して充当しなければなりません。
季節性資金
季節性資金も通常の支払いとは別に発生するものなので、別途仕入れのための運転資金が必要になります。
コンビニの恵方巻の例はわかりやすいのですが、大量に仕入れなければならず、そのための運転資金が必要です。恵方巻が売れないとそれだけで損失が莫大なものになってしまいます。
最近は季節性資金の無駄を少なくするため、恵方巻、土用の丑の日のウナギ、クリスマスのチキンなどを完全予約制にして、季節性資金が無駄にならないような配慮をしています。
業種によっては季節のイベントが大きな売り上げになるので、何とかして資金調達しなければなりません。
借入先の統一
複数の金融機関からの借入を1つの金融機関に統一すると、返済遅延リスクが減り、一本化した金融機関からの評価が高くなります。
通常の借り換えではなく、借入先の統一なので、一本化しない金融機関については一括返済します。そのため、一時的に高額の返済資金が必要になります。
他の銀行の返済をするため、新しく融資を受けるというのは審査に通らない可能性があり、融資によらない方法で返済のためのキャッシュを調達しなければなりません。
運転資金の借入目安
事業継続に必要な運転資金は、月商(毎月の売上)の3か月~6か月分だと言われています。これだけあれば、売掛先の不渡りや急激な原材料費の高騰、同業他社の不祥事による売上激減などにも耐えられます。
全額借入で補うのではなく、自己資金(現金、預金)では足りない部分を借入します。実際に銀行融資で認められる借入額は月商の3か月~4か月分くらいです。
それ以上になると特段の理由を説明しなければなりませんし、自己資金がない「自転車操業」している事業者には金融機関はリスクがあり融資できません。
ある程度の自己資金があり、かつ月商の3か月~4か月分というのが、運転資金借入の目安になります。
運転資金の融資が受けられる金融機関
運転資金の融資を受けられる金融機関は銀行だけではありません。以下の金融機関で融資を受けられます。
銀行
都銀、メガバンクだけではなく地銀でも融資を受けられます。特に地銀の場合、地域に根差しているので継続的な取引をしていると、いざというときに助けてくれるかもしれません。
銀行の審査は基本的にドライです。銀行は営利目的の企業なので返済が危ないとわかれば融資しません。
信用金庫
銀行よりも審査がやややさしく、業況が厳しい場合にも融資を受けやすいのが信用金庫です。信用金庫は銀行と違い営利だけを目的とせず、地域振興や中小企業振興も目的としています。
中小企業や個人事業主であれば、信用金庫から融資を受けた方が良いかもしれません。その地域にある信用金庫に加入し、組合員の相互扶助のシステムで融資を行います。
ノンバンク
消費者金融のことです。銀行は銀行法によって規定されますが、ノンバンクは貸金業法によって規定されます。
銀行や信用金庫よりも審査は易しく、融資を受けやすいですが、事業者向け「ビジネスローン」は上限1000万円という壁があります。
また、ノンバンク利用歴は信用情報に記載されるため、以後の融資が受けにくくなるデメリットがあります。
政府系金融機関
政府系金融機関である日本政策金融公庫を利用します。日本政策金融公庫は税金が投入されていて、経営が厳しい中小企業や個人事業主を助けます。
民間金融機関では融資を断られるような業況の事業者でも、政府系金融機関である日本政策金融公庫ならば融資を受けられる可能性があります。
自転車操業しているような事業者、返済不能リスクがある事業者にも、ある程度の事故率を織り込んで融資します。税金で返済不能になった部分は補填します。
運転資金が本当に厳しい場合、ノンバンクよりも先に政府系金融機関である日本政策金融公庫に行くべきです。
運転資金融資のポイント
運転資金の融資を受ける際に注意したいポイントをまとめました。これらに注意すれば融資審査に通る可能性が上がります。
借入れの理由を明確にする
設備資金は「〇〇を買いたい」「〇〇によって売上が伸びる」と明確にできるので、月商に対してその数倍の融資が可能です。
しかし、運転資金の場合、漫然と「仕入れ資金が欲しい」と言っても、業況が悪いだけでは?と思われてしまいます。
借入する理由を明確にして、その借入の効果も客観的に示すことが大切です。
借入金額は適正にする
借入金額は確実に返せる金額にしてください。審査の過程で金融機関がしっかり査定しますが、それでも返済できない可能性があります。
融資による資金調達は「負債」です。負債をそのままにしておくことはできないので注意してください。
返済計画を立てる
客観的な返済計画があると、金融機関も融資しやすくなります。また、自社の経営計画を立てる上でも、返済計画は重要です。
返済計画は自社のキャッシュフローを明確化することにもつながります。キャッシュフローの把握は経営の重要な要素になります。
必要書類を準備する
必要書類を漏れなく用意することは迅速な融資につながりますが、それだけではなく、し尿できる事業者という印象を金融機関に与えます。
書類ミスばかりする相手をお客様にはしたくないはずで、完璧に書類をそろえる事業者なら優良顧客になる可能性があり、融資自体通りやすくなります。
運転資金の融資以外の資金調達方法
運転資金の調達方法は融資だけではありません。融資は「デットファイナンス」という資金調達方法で、負債計上しますが、そうではない「アセットファイナンス」「エクイティファイナンス」という資金調達方法もあります。
補助金・助成金
補助金や助成金は返済不要な資金調達方法で、税金を受給する方法です。上述の「〇〇ファイナンス」には該当しませんが、返済しなくてもよい資金調達は大いに魅力です。
しかし、税金を使うため、審査、事後チェックは厳しく、少しでも不明朗な部分があれば返金を求められます。
また、補助金や助成金は申請した事業が完了してからの事後支払いです。したがって、運転資金が今必要だ、というケースには向きません。
将来的に大きな事業を計画していて、そのための人件費や広告費などを補助金や助成金で補うという使い方になります。将来への投資を税金で補ってくれるものです。
ビジネスローン
ノンバンクが行う事業者向けローンです。審査について、通常の融資とは異なるスコアシステムを用いており、迅速かつ難易度が低いものになっています。
しかし融資ですので信用情報照会があります。また、ノンバンク=消費者金融なので、消費者金融からの融資歴が信用情報に残ってしまいます。
ビジネスローンを利用するのは「最後の手段」にしましょう。
ファクタリング
自社が持っている売掛債権を売却して現金化します。資金調達としては「アセットファイナンス」に該当します。
売掛債権があれば誰でも利用できます。また、融資ではないので負債にならず、信用情報照会も信用情報に利用歴を記載されることもありません。
信用情報と無関係なので、過去に返済事故などを起こした「信用情報ブラック」の事業者でも利用できます。申し込みから現金化まで数日で、最短即日も可能です。
手数料を金利換算すると、利息制限法を超えることもありますが、単発で信用に影響しない資金調達方法として近年注目されています。
まとめ:運転資金の融資は適切な方法で行おう
運転資金は事業継続に不可欠ですので、適時適切なタイミングで調達しましょう。運転資金は血液であり酸素です。なくなると倒産に直結してしまいます。
融資による資金調達が一般的ですが、ファクタリングなど他の運転資金調達方法も登場しています。
適切な金額を適切な方法で調達し、諸経費を支払えなくなるリスクを減らしてください。自社のお金の流れ、キャッシュフローを見直すのも効果的です。
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