リバースファクタリングとは?メリット・デメリットや流れを解説
ファクタリングは「売掛債権の譲渡、買取」だと理解されています。しかし、その逆に財やサービスを納入された債務者側が買掛金、買掛債権をファクタリング会社に譲渡し、現金化を求めることがあります。
それが本稿で紹介する「リバースファクタリング」です。何のことなのかよく理解できない、という方向けにわかりやすく解説します。通常のファクタリングとは真逆のリバースファクタリングについて、しっかり理解しておきましょう。
リバースファクタリングとは
リバースファクタリングとは、債権者ではなく債務者が持つ買掛金を支払期日到来前にファクタリング会社に買い取ってもらい現金化し、債権者に支払う債権現金化手法になります。
下記の事例を考えてみましょう。
債権者(下請け先):A社 債務者(発注先):B社 ファクタリング会社:C社 毎月末日締め翌々月末払いの工事をA社がB社から受注している 5月31日締め:売掛金(A社→B社) 100万円 7月31日支払い:買掛金(B社→A社) 100万円 <リバースファクタリング> 5月31日締め:売掛金(A社→B社) 100万円 6月30日:B社がC社に請求書を提出。B社の買掛金をC社が買い取り 7月1日:C社がA社に手数料を引いた売掛金97万円を支払い 7月31日支払い:買掛金(B社→C社) 100万円を支払い |
リバースファクタリングの場合、売掛金支払いまでのサイト中に、債務者が持つ買掛金をファクタリング会社が買い取り、手数料を引いて債権者(下請け先)に支払います。
これにより、買掛金期日到来前に、債権者に売掛金を支払うことができます。
リバースファクタリングを行うファクタリング会社(C社)は、利用者(債務者)であるB社の代わりに買掛金を先払いすることになります。
リバースファクタリングは「3社間ファクタリング」であり、手数料も1%~5%と低めです。期日よりも前に債権者に支払うわけで、当然、債権者、債務者、ファクタリング会社3者が合意していないとできない手法です。
通常のファクタリングとの違い
リバースファクタリングと通常のファクタリングとの違いについて表にまとめました。
リバースファクタリング | 通常のファクタリング | |
---|---|---|
利用者、申請者 | 発注者、債務者 | 受注者、債権者 |
買い取り対象債権 | 買掛金 | 売掛金 |
買い取ったお金の支払先 | 受注者、債権者 | 受注者、債権者 |
手数料負担 | 受注者、債権者 | 受注者、債権者 |
買い取りスピード | 即日~3日 | 即日~1週間までさまざま |
何社間ファクタリングか | 3社間ファクタリング | 2社間ファクタリング3社間ファクタリング |
通常のファクタリングが主に売掛金の債権者による早期現金化が目的なのに対して、リバースファクタリングは、買掛側(債務者)が買掛金の支払いサイトを延ばしたり、優良な外注先に契約よりも早く現金を渡して繋ぎ止めたり、債務者の資金繰りを改善したり、多様な目的で利用されます。
リバースファクタリングのメリット
リバースファクタリングは発注先(債務者)、外注先(債権者)双方にメリットがあり、合意ができれば有効な決済方法となります。それぞれのメリットについて確認しておきましょう。
発注企業のメリット
まず、発注企業(債務者)側のメリットについて説明します。リバースファクタリングは発注企業のメリットが大きいから行われるファクタリングになります。
資金繰りの改善
リバースファクタリングを行うことで、ファクタリング会社が外注先(債権者)支払いを代行してくれます。つまり、売掛先企業への支払い期日を先延ばしすることができます。ファクタリング会社への支払いは、原則、当初の(ファクタリング契約なし)の支払日ですが、もう数日待ってもらうこともできます。
これにより発注企業にとっての買掛金の支払いサイトを長くすることができます。当初7月31日が期日の買掛金の支払いがリバースファクタリング利用によって8月10日などにできるケースがあります。
これにより、8月1日~9日までは支払うべき現金が手元に残るため、一時的に資金繰りが改善します。他社への支払いや固定費の支払いに充てることができるようになり、融資に依らなくても当座をしのぐことができます。
コストの削減
リバースファクタリングの手数料はすべて下請け先(債権者)が負担します。したがって、発注先(債務者)は一切のコスト負担が発生しません。ファクタリング利用をしない、通常の買掛金支払の場合、振込手数料や支払いのための事務コストが生じます。
しかし、リバースファクタリング会社に債権者への支払いを一元化できれば、それらのコストはかからず、すべてファクタリング会社と債権者とのやり取りで完結します。
支払いを簡素化することで、コストの削減につなげます。
優秀な外注先の確保
優秀な外注先を確保するためには金払いがいいことが不可欠です。外注先(債権者)から見ると、請求後すぐ現金が手に入る仕事を優先します。支払いサイトが数十日後の仕事は後回しになります。
優秀な外注先を確保する意味でも、早期に債権者への支払いができる(かつ、自分の支払いは当初の期日移行で済む)リバースファクタリングは使えます。
外注先のメリット
外注先(債権者)にとってもリバースファクタリング契約をするメリットがあり、利用を検討してもいいでしょう。
早期現金化
通常の売掛金回収期日よりも早期に現金化が可能です。サイトが長ければ実際に売上が発生してから現金が振り込まれるまでに時間がかかり資金繰りが悪化してしまいます。
短期的な資金繰り改善効果のほか、資産はあるのにキャッシュフローが足りないためにおこる「黒字倒産」のリスクも減らすことができます。
手数料が安い
リバースファクタリングは外注先(債権者)が手数料を支払うシステムになっているため、売掛金を100%早期現金化できるものではありません。
しかし、3社間ファクタリングなので、手数料は安く、5%以下に収まります。手数料5%以下と早期現金化を天秤にかければそれほど悪い話ではないはずです。早く現金として回収できることにデメリットはないからです。
貸し倒れリスクの軽減
発注企業(債務者)が倒産や不渡りを起こしてしまうと、当然売掛金の回収ができなくなってしまいます。どんなに発注先が優良企業でも何があるかわかりません。売掛金振込なでのサイトが長ければ、貸し倒れリスクはどうしても発生してしまいます。
リバースファクタリングを用いることで、早期に現金として回収できるため、貸し倒れリスクを軽減させることができます。
リバースファクタリングのデメリット
リバースファクタリングはメリットばかりではありません。デメリットもあり、それも踏まえて判断していただかなくてはなりませせん。
提供会社が少ない
リバースファクタリングを取り扱っているファクタリング会社が少ないことです。リバースファクタリングを利用したい発注先(債務者)は数千万円単位の買掛金を買い取ってもらいたいのですが、それに応じられる資金力のあるファクタリング会社が少ないのです。
ファクタリング全体の需要と比べて、リバースファクタリングの需要もそれほど多くなく、少数の資金力のあるファクタリング会社の提供メニューとなってしまいます。
でんさいの導入が必要
リバースファクタリングを利用するためには、電子記録債権(でんさい)取引を可能にする「でんさいネット」への加入、導入が必須になります。
でんさいネットを導入するためには、銀行と取引があり、審査に通過することが必須です。でんさいネットの審査は融資の審査以上にハードルが高いと言われていて、でんさいができる会社=優良企業です。
いくらリバースファクタリングを使いたくても、でんさいネットの審査が通らない可能性もあり、意外に高い障壁になります。なお、リバースファクタリング実施のためには、債権者、債務者双方がでんさいネットへ加入することが必要であり、つまり、双方とも審査にパスする必要があります。
外注先の手数料が発生する
リバースファクタリングは3社間ファクタリングなので、手数料は低めですが、それでも売掛金額が大きければ無視できません。しかも、債務者(発注先)の希望でファクタリングするのに、手数料を支払うのは債権者(外注先)です。
通常のファクタリングと流れが異なるので、債権者とすれば納得いかないかもしれず、手数料を考慮して、そもそもの発注額を高く求めてくるかもしれません。
リバースファクタリングの流れ
リバースファクタリングを行う際の流れをチャートにまとめました。
でんさいネットへの加入 |
↓
掛け取引の発生(現金取引や手形取引は不可) |
↓
債務者がファクタリング会社にリバースファクタリングを依頼 |
↓
ファクタリング会社による審査 |
↓
ファクタリング契約(債権者、債務者、ファクタリング会社の3社間ファクタリング) |
↓
債権者から債務者へ請求書の発行(○日締め△日払い) |
↓
債務者がリバースファクタリングをファクタリング会社に依頼 |
↓
ファクタリング会社が債権者に買掛金を支払い(掛け取引金額-手数料) |
↓
期日、もしくは期日後に債務者が買掛金をファクタリング会社に支払う |
通常のファクタリングと比較し、やるべきことが多いので注意してください。リバースファクタリングは債権者、債務者双方がファクタリングに合意し、でんさいネットへの加入が必要となります。
リバースファクタリングがおすすめの会社
リバースファクタリングを使うことでメリットがある会社、この場合の会社は債務者、発注者側になりますが、どのような会社におすすめできるのでしょうか?
支払いサイトが短い会社
買掛金の支払いサイトが短い会社は資金繰りに困ります。売掛金のサイトが60日、買掛金のサイトが30日ならば自ずと資金がショートしてしまいます。
リバースファクタリングを行うことで、支払いサイトを延ばすことができるかもしれません。売掛金サイトと同じにはできないかもしれませんが、30日が45日になるだけでもキャッシュフロー面でかなり楽になるはずです。
買掛金が大きい会社
買掛金の金額が大きいと、売掛金の回収に何かトラブルがあった場合や、突発的な資金需要によって、一気にキャッシュフローが悪化、買掛金の支払いが厳しくなる可能性があります。
リバースファクタリングを行うことで、ある程度買掛金の支払いサイトを調整できるので、急な資金需要で不渡りや支払い不能になるリスクを減らせます。
資金繰りが厳しい会社
買掛金の支払いサイトを調整できるので、間近に迫った支払いを延ばすことができ、資金繰りが厳しい会社も当面しのぐことができます。しかし、資金繰り悪化が恒常的なものであれば一時しのぎにしかならないことは意識してください。
経営の根本的な改善が不可欠です。
まとめ:リバースファクタリング
リバースファクタリングは、債務者側が買掛金の買取を依頼するという、通常のファクタリングとは逆の構図を取ります。
手数料については債権者が払うので、事前にしっかり説明し了解を得ておく必要があります。債権者の手取りが減るのは確実なので、彼らの心証を悪くしてはいけません。
関係者の同意を取り付けたうえで、誠実な姿勢を見せることで、リバースファクタリング実施を了解してもらえます。
自社にとってリバースファクタリングが本当に必要なのかよく判断していただき、行いたいというのであれば信頼できるファクタリング会社にご相談ください。
この記事へのコメントはありません。