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キャッシュフローの改善方法は?3つの種類と悪化の原因を紹介

「キャッシュフロー経営」と言われる経営手法があります。「キャッシュ」は「現金」だとわかりますが、それに「フロー」を付けるとどのような意味があるのでしょうか?

キャッシュフローがどのような状態になると、経営にとってプラスであり、「キャッシュフロー経営」が実現できるのか、またキャッシュフローを改善するためにはどのような方法があるのか、今回はキャッシュフローという概念やそれを経営に生かすメリットなどについて紹介していきます。

従来の経営手法とキャッシュフローを重視した経営ではどこが違うのか、みなさまはキャッシュフローを重視すべきなのか、解説していきます。

キャッシュフローとは

キャッシュフローとは、事業を営む上でのお金の出入りを意味します。

  • 販売先、取引先などからお金が入ってくること→キャッシュ・イン・フロー
  • 代金の支払い、仕入などでお金が出ていくこと→キャッシュ・アウト・フロー

と呼び、この2つをまとめたものが「キャッシュフロー」です。

キャッシュフローという概念を用いなくても、財務諸表(貸借対照表や損益計算書)でお金の状況はわかるのではないか?と思われるかもしれません。

しかし、書類上のお金とキャッシュフローでは異なります。

例えば、5月31日に100万円売上がありました。それを現金で受け取ればキャッシュ・イン・フローがプラスになり、手元にキャッシュがあります。これなら6月10日に70万円の買い物がキャッシュで可能です。

しかし、5月31日の売上が現金ではなく売掛債権(売掛金)として計上し、請求書を出して後日支払いだとします。

この場合、6月10日にはキャッシュがないので、現金払いでの買い物ができません。ツケ払い(買掛金)とした場合、買い物はできますが、今度は売掛金の支払日が問題となります。

売掛金の支払日が6月30日で、買掛金の支払日が7月以降ならば(100万円-70万円>0)で買い物ができます。しかし、売掛金の支払日が7月31日、買掛金の支払日が7月15日の場合、買掛金支払日にキャッシュがなく資金がショートして不渡りを起こします。

手形取引ならば不渡り2回で事実上倒産です。書類上は売上(資産)があるのに、実際の支払いの際にはキャッシュがなく支払えない、こうした事態を避けるために重要なのがキャッシュフローです。

キャッシュフローを正確に理解していれば、6月10日の買い物を見送る、延期するなど正確な経営判断ができます。

キャッシュフローの理解はとても大切だとわかります。

3種類のキャッシュフロー

キャッシュフローは3種類あり、それぞれ算出方法が異なります。基本的にプラスの方が望ましいのですが、マイナスだから即経営がうまくいっていないことにはなりません。

営業キャッシュフロー

本業でどのくらい稼いでいてお金の出入りがあるか確認できるキャッシュフローです。本業の結果、どのくらいお金が「増えた」のか「減った」のかを確認できます。

このキャッシュフローがマイナスの場合現金不足で、本業が苦戦していることになります。

3つのキャッシュフローの中でも最も重要なものになります。

投資キャッシュフロー

設備投資や企業買収など、現在ではなく将来に向けて事業拡大のためにどれだけお金を使っているか現したキャッシュフローです。

投資をどのくらい行い、どのくらい回収しているか等がわかります。投資キャッシュフローがマイナスでも、積極的な投資を行っていることになります。

投資を行う余裕があるわけで、マイナスでも問題なく、積極的に将来に向けてお金を使っていることになります。

逆に投資キャッシュフローに動きがないと、会社に余裕がなく「守りの経営」に入っていることになります。

優良企業ほど、投資キャッシュフローはマイナスであることが多いです。

財務キャッシュフロー

出資や借入、融資など外部から資金調達した場合のキャッシュフローを示します。

財務キャッシュフローは、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローを調整するものであり、足りないキャッシュをどのような手段で補填したのかがわかります。

借入をすると財務キャッシュフローが増え、返済すると財務キャッシュフローが減ります。

借入金を返済した場合は財務キャッシュフローがマイナスになり、貸借対照表上の負債も減少します。

財務キャッシュフローはマイナスの方が良いケースが多いのですが。業績好調で積極的に借入をして設備投資している会社は財務キャッシュフロープラスになっています。

キャッシュフローを改善するメリット

キャッシュフローについては、営業キャッシュフローのプラスが望ましく、投資キャッシュフローと財務キャッシュフローのプラスマイナスはケースバイケースです。

キャッシュフローを改善するメリットは以下の3つになります。

経営の自由度が向上する

キャッシュフローを改善すれば、経営者が持つ経営の自由度が上がります。キャッシュフローを改善させることで、資金に余裕ができます。

資金に余裕ができれば、さまざまな経営上の選択ができます。設備投資をする。株や債権を購入する、従業員を増やす、賃上げする・・さまざまな経営上の判断を行う余地が増え、事業規模の拡大や多角化、他企業のM&Aなど「攻めの経営」がしやすくなります。

経営が安定化する

キャッシュフローが改善されれば、資金繰りにめどがつくので、それだけ経営が安定化します。潤沢な資金があれば、多少急な出費や資金の未回収があっても耐えられます。

しかし、キャッシュフローがマイナスの状態で、支払い義務など「キャッシュアウト」が発生すると、黒字倒産の危機になります。

売上はあり、売掛金計上しているが、買掛金や支払いに売掛金回収が間に合わない場合などは、財務諸表では黒字ですが、キャッシュフローがマイナスなので、黒字倒産してしまうケースになります。

キャッシュフローを改善することで、急な出費、思わぬ資金需要に耐えられるようになります。

外部からの信用力が向上する

キャッシュフローについて記した「キャッシュフロー計算書」は、金融機関や投資家の判断材料になります。

キャッシュフローが改善することで、外部からの信用力が向上します。融資や出資を受けやすくなり、キャッシュフローがさらに改善します。

キャッシュフロー計算書も含めて決算書の開示をすることで、取引先も安心します。

新規取引先開拓もしやすくなります。

キャッシュフローが悪化する原因

なぜキャッシュフローが悪化するのか、主な原因を探ると以下の5つが挙げられます。

経営不振

売上が減り、利益率も下がれば、営業キャッシュフローがマイナスになり、全体のキャッシュフローが悪化してしまいます。

これは事業を行う上で、根本的な問題です。本業が悪化してしまえば、キャッシュの流れも悪くなってしまいます。

売掛金の未回収

黒字倒産の原因にもなる売掛金の未回収です。売上として計上していても、現金が入って来ないので、営業キャッシュフローがマイナスになります。

貸借対照表上は「資産」として売上計上していても、実際の現金、キャッシュがなく支払いができない、自己資本がない状態はキャッシュフローが悪化しています。

売掛金の回収は、本来の支払い期限から遅れるほど不良債権化して回収できなくなります。債権管理も本業と同様に重要な仕事とご認識ください。

在庫の増加

売れる在庫が増えるのは問題ありませんが、そうではなく売れない在庫を抱えてしまうことです。売れないとお金のやり取りが発生せず、キャッシュフローが動きません。

過剰な在庫は、維持費や管理費用もかかり、売れる商品でも品質が劣化してしまい、売れない在庫、不良在庫になってしまいます。

過剰な設備投資

過剰な設備投資もキャッシュフローが悪化する原因になります。

本業の利益である営業キャッシュフローがプラスであり、業績が上向いている中での積極的な設備投資は投資キャッシュフローがマイナスになっても、大きな問題になりません。

しかし、「無駄な公共事業」のような必要ない設備投資は、利益を生みません。自治体が誰も来ない山に豪華な美術館を作っても回収できず、不良債権化してしまうのと同じ論理です。

不要な設備投資をしてしまうと、利益を生まないばかりか、返済増、キャッシュアウトだけが発生してしまいます。

借入返済額が多い

借入金が多く、その返済に追われている場合もキャッシュフローが悪化します。財務キャッシュフローが膨らむので当然です。

借入返済額が大きくなる要因としては

  • 借入金額自体が多い(借入過多)
  • 無理な返済計画(1か月あたりの返済額が多い)

借入過多は当然ですが、適切な金額を借りていても、無理な返済計画を立ててしまうと、その返済で経営が圧迫されてしまいます。売掛金回収できない場合、返済によって黒字倒産の要因にもなってしまいます。

キャッシュフローの改善方法

キャッシュフローが悪化している場合、どのようにすれば改善できるのでしょうか?キャッシュフローの改善方法について紹介します。

改善方法1 利益を上げる

売上を伸ばし利益を増やせば当然キャッシュが入ってきます。

最も「王道」で正しい方法になります。利益が増え、使える現金、自己資本が増えればさまざまな経営上の選択肢を採れます。

改善方法2 資金繰り表の作成

資金繰り表は、企業の収入と支出を分類、集計した表になります。コンサルタントなどの力を借りても良いので作ってみましょう。

資金繰り表を作成することで、キャッシュフローの問題点が把握しやすくなります。

自社の資金繰り、キャッシュフローを俯瞰できるので、キャッシュフロー悪化の際に迅速な対応ができます。

売掛金と買掛金のサイトを見誤り、黒字倒産してしまうような事態を防げます。

改善方法3 不良在庫を減らす

上述した通り、在庫が増えすぎていること、特に売れない不良在庫を抱えていると、倉庫代やメンテナンス代も合わせて大きな負担になります。

現金化できない在庫は、キャッシュフローの悪化の原因となります。

仕入値よりも高く売らないと・・と思わず、棚卸セールの感覚で安くても早期に売れない在庫を処分することで、キャッシュフローが動きます。不良在庫、不良債権化する前に手を打ちましょう。

改善方法4 入出金期間の見直し

黒字倒産の事例では、買掛金の支払期日の方が早くて、売掛金の回収日に間に合わないことが原因となっていました。

売掛金の回収日を早められないなら、買掛金の支払日を遅らせることができないか、クライアントと交渉してみましょう。

売掛金回収期間を早められれば、買掛金支払いに間に合わない、不渡りを起こすリスクも減ります。

売上のタイミングと支払方法の変更、支払期間の見直しによってキャッシュフローが改善されることがあります。

改善方法5 ファクタリングで未回収の売掛金を買い取ってもらう

未回収の売掛金を当初の期日よりも前に回収できれば、現金が入ってくるため、キャッシュフローが改善されます。

帳簿上の「売上」と実際の「現金」「預金」のタイムラグを減らし、自己資本を増やします。

ファクタリングは売掛金を債権としてファクタリング会社に買い取ってもらうサービスです。100万円の売掛金ならば、80万円~90万円くらいで、当初の期日よりも前に現金化できます。

特に売掛金も支払いサイトが長い場合、突発的な事態で回収不能になるリスクもあります。回収できず不良債権化すれば、キャッシュフローは大幅に悪化してしまいます。

100点ではありませんが、80点か90点でも早期現金化したい場合、ファクタリングがキャッシュフロー改善方法としておすすめです。

改善方法6 借入金返済の見直し

借入金返済のスケジュールを見直すことで、キャッシュフローに余裕ができます。

毎月20万円返済だったものを10万円返済にして返済期間を延ばせば、その分資金繰りに余裕ができます。

この返済スケジュールの見直し、リスケもキャッシュフロー改善方法として挙げられます。

ただし、返済期間を延ばす方向での条件変更(繰り下げ返済)は信用情報に大幅なマイナスになります。以後の融資の際にも減点となるので慎重に判断してください。

改善方法7 追加融資を受ける

追加融資を受けることで、使える現金、キャッシュを増やし、キャッシュフロー改善方法となります。

しかし、融資を受ければ負債となり返済義務を負います。財務キャッシュフローを増やす方法であり、結果的に自社の経営を長期的に苦しめる要因にもなり得ます。

なるべく返済負担が少ない、つまり利率が低い融資を選びましょう。政府系金融機関の日本政策金融公庫や自治体の制度融資がおすすめです。

まとめ:キャッシュフローを改善して安定した経営を目指そう

キャッシュフローは財務諸表(貸借対照表、損益計算書)の影に隠れがちですが、今使えるお金がどのくらいあるか、黒字倒産しないように現金の出入りを把握するために不可欠なものです。

安定した経営のためには、財務諸表だけではなく、キャッシュフロー、キャッシュフロー計算書によってお金の流れを把握することが大切です。キャッシュフローを改善することが近道です。

無駄な投資、不良債権化した在庫を減らし、自己資本を増やし、今使えるお金を潤沢にすることで、不測の事態に備え、経営上の「遊び」を作れます。

ぜひキャッシュフローについて理解していただき、みなさんご自身の会社のお金の流れを把握してみてください。

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