返済不要の資金調達方法5選!調達時の注意点も解説
資金調達と聞くと銀行融資をイメージする人がいますが、それだけではありません。
融資によって資金調達すると「負債」として貸借対照表に計上しなければなりません。負債は会社の経営を圧迫します。返済義務があるので、返済できないと信用情報に傷がつき、会社として以後の融資が受けられなくなります。
融資による資金調達を気軽に考えていると、お金を借りすぎてしまい、いざという時にキャッシュを用意できなくなります。
しかし資金調達方法は融資だけではありません。返済義務のない、負債にならない資金調達方法もあります。今回は融資以外、返済不要の資金調達方法を5つ紹介します。もちろん、メリットばかりではなくデメリット、注意点もあるのでしっかり押さえておきましょう。融資によらない資金調達方法をぜひ知ってください。
返済不要の資金調達方法
ファクタリング
売掛債権の有償買い取りです。自社が持っている「〇日に△△万円の売掛金を受け取る」という権利をファクタリング会社に買い取ってもらい、売掛金入金日前に現金化できます。
手形割引に近いイメージです。しかし、融資ではないので、信用情報紹介もなく、審査も比較的簡便、迅速に進みます。
手数料はやや高めで、融資の利息に換算すると利息制限法を超えることもあります。売却なので、借入と違い返済不要で、短期間に単発の資金調達が可能です。
負債にならず、資産計上していた「売掛金」勘定を、すぐに「現金」「預金」という資本(総資産)勘定へコンバートできます。
資金調達だけではなく、オフバランス化など経営の効率化も期待できる返済不要の方法です。
クラウドファンディング
ネット上で寄付を募る比較的新しい資金調達方法です。寄付なので出資と異なり経営に介入される可能性はありません。
ただし、当初設定した目標額(「○○をしたいので△△△万円寄付が必要です」)を達成できなかった場合、返金する必要があります(クラウドファンディングによっては目標額が集まらなくても寄付として受け取れるものもあります)。
また、寄付額に応じて寄付者にリターンを提供するのが一般的です。どのようなリターンを提供するかで寄付額が多くもなり、集まらなくもなり、その塩梅が難しいです。
リターンは持ち出しになるので、高いものというよりも希少なもの(製造したものに寄付者の名前を入れる)などのほうが喜ばれます。
なお、ネットと親和性のある資金調達方法なので、内容によっては炎上しやすいこともデメリットとして押さえておいてください。
補助金・助成金
公的な返済不要の資金を受給します。補助金と助成金は微妙に異なり
- 補助金:審査あり、審査に落ちるともらえない
- 助成金:条件を満たすと基本的にもらえる、厚生労働省管轄のものが多い
という違いがあります。また、100%補助されるものではなく、ある目的にかかった費用の最大でも3/4(通常は1/2~2/3が多い)の支給となります。一定金額は自己負担が必要です。
また補助金も助成金も自由に使える運転資金ではなく、申請時に示した目的のみに使えます。審査は厳格で、公金を使うので書類に瑕疵がある、実際に事業が行われなかったなどが監査によってわかると返還命令が出ることがあります。
他の資金調達との大きな違いは、補助金、助成金は「後払い」ということです。先に自己資金で事業を行い、実施後監査、検査にパスして初めて申請額が振り込まれます。
つまり、手元にお金がないから返済不要の補助金、助成金を申請することはできません。後からお金が入ってきて、自己資本がプラスになるという認識でいてください。
VCからの出資
VC(ベンチャーキャピタル)は未上場で将来性がある企業に積極的に出資しをして、成長に寄与する仕組みです。
出資によって会社が成長すれば株価も上がるため、株式の配当や高値になった時に株式を売却することで、差益をVCの利益としています。
お金を貸すわけではないので、返済不要の資金調達になります。しかし、未上場、つまり市場原理で評価を受けていない企業に返済不要のお金を出資するので、その審査は厳しいものになります。
VCの出資を受けられる企業というのは、それだけで外部評価が高まります。一定のステータスになり、銀行から融資を受けたり、ここで述べる他の資金調達についても有利になります。VCから出資を受けられる企業は、通常の銀行融資なら「楽勝」のはずです。
エンジェル投資家からの出資
エンジェル投資家とはスタートアップ企業専門の投資家です。「エンジェル税制」などと同じように、赤ちゃんという意味でのエンジェルになります。
開業間もない企業の将来性を見込んで、「親のような目線で」出資を行い、資金調達に寄与します。
ベンチャーキャピタルとエンジェル投資家は似ていますが、VCはある程度伸びていくことが予想される企業に対して、燃料として出資します。エンジェル投資家は完全にスタートアップ企業の将来性を信じて、ハイリスクハイリターンを期待して出資します。
エンジェル投資家の方が「金も出すが口も出す」傾向にあります。また、開業してからしばらく経っている会社は、エンジェルではないので、エンジェル投資家からの出資は受けられません。
返済不要な資金調達を利用する際の注意点
返済不要の資金調達はメリットだけに思えますが、実はそうではありません。返済が必要ということはビジネスで割り切れる部分がありますが、返済不要だから注意しなければならないものもあります。
「只より高い物はない」というのは今でも通じるものなのです。
出資は経営への介入の可能性がある
出資を受ける形式の資金調達方法の場合、自社の株式を他者が取得してそのお金を資金に当てるわけですが、当然株主になります。
株主は所有している株式の比率に応じて、株主総会での議決権を有します。この場合、特に問題になるのがエンジェル投資家です。
出資による資金調達はベンチャーキャピタルとエンジェル投資家、双方が該当しますが、ベンチャーキャピタル(VC)の場合、経営に関与して自社の思い通りにしたいという以降は低く、良くも悪くもドライです。この会社は成長しないと判断すれば、株式を売却して「損切り」して終了です。
しかしエンジェル投資家の場合、本当にスタートアップの資金を拠出するので、まるでその会社の親のような気持ちでいる人もいます。VCは会社として資金調達した企業に接しますが、エンジェル投資家は個人として向き合うので距離が近くなります。
その中に、自分がお金を出した会社の方向性が間違っている、という思いを持った株主がいたら、株主総会で驚くような提案をしたり議決権を行使して会社提案を否決したりするかもしれません。
しかしこれは出資者(株主)当然の権利なのです。出資によって資金調達したい場合、このリスクに向き合わなければなりません。
希望の金額を調達できない可能性がある
融資の場合、最初から「○○○万円必要です。そのための融資をお願いします」と申込をします。減額査定され、条件付きの融資となる場合もありますが、今回紹介した資金調達の場合、それよりも高い確率で希望額の資金調達が叶わない可能性があります。
融資は法律に則って、利息収入を期待して金融機関はお金を貸しますが、今回紹介した資金調達方法はビジネス+善意の部分があります。善意は100%期待に応えるものではありません。
また、補助金や助成金の場合、補助率100%のものは少なく、半額~1/3程度の自己資金は必要になります。後払いであり、事業実施時に全額自己負担で立て替えることも必要になります。
希望額を調達できない可能性について、最初からお含みおきをお願いします。
詐欺に注意する
融資の場合、銀行業や貸金業法の許可がある事業者が行いますので、その許可さえ確認できれば詐欺被害に遭う可能性はとても低いです。
しかし、今回紹介した資金調達方法は、行政が行う補助金や助成金は別にして、それ以外については悪徳業者が紛れ込んでいる可能性があります。
資金調達、詐欺と聞くとヤミ金融を思い出す人も多いでしょうが、資金調達に関わる詐欺はそれだけではありません。エンジェル投資家の中には、巧みな話でその気にさせて、最終的に会社を乗っ取る人がいるかもしれません。投資家が詐欺を働くというよりも、詐欺師が投資家だったケースです。
ファクタリングでも法外な手数料や償還請求権(売掛先から回収できなかった場合、自分が弁償する義務)付きの契約がわからないようにされてしまうかもしれません。
融資と比較してさまざまな規制が緩いので、それを逆手にとってつけ入れられる隙があるのが今回紹介した資金調達方法です。補助金や助成金は公的資金なので、規則はしっかりしていますが、その話を持ってくるうさんくさい「コンサルタント」「コーディネーター」には要注意です。補助金詐欺(実際には補助金申請できないのに手数料だけ取る)の可能性もあります。
まとめ:返済不要の資金調達方法も検討しよう
資金調達方法としては融資が王道ですが、融資の審査には時間がかかり、信用情報照会など法的規制の壁もあります。
過去に返済事故を起こした事業者が再び融資を受けるのは至難の業です。ヤミ金融に手を出す前に、融資によらない、返済不要の資金調達方法についても確認しておきましょう。
負債にならない資金調達方法を知っていれば、いざという時に多様な選択肢を取れます。それぞれ異なるリスクなので、リスクヘッジも可能です。返済が必要な負債になるかどうかも重要なポイントです。
資金調達がいつまでに必要なのか、ある程度時間があれば融資や補助金、そうでなければファクタリングや出資を選べます。
臨機応変に対応できる資金調達がみなさんの事業を豊かにし、経営改善につなげます。ぜひ今回の返済不要の資金調達についてご検討ください。
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