保証ファクタリングとは?仕組みやメリット・デメリットを解説
通常のファクタリングは自社の資金繰り等に問題があり、一刻も早く現金を調達したいため、売掛債権を支払日前にファクタリング会社に買い取ってもらうシステムですが、「保証ファクタリング」は、一刻も早い現金化を目的としておらず、むしろ売掛先の経営に不安があり、不払いや倒産等のリスクをヘッジし、回収不安を和らげるための制度です。
保証ファクタリングとは
自社の資金繰りに問題なくても、売掛先の経営に不安があったり、ちょっと怪しい、どのような経営者が事業運営しているのかわからない会社だったりする場合、売掛金の支払いが滞る、できない可能性があります。
こちらが財やサービスを提供して、債権者となっているのに債務者が債務不履行になるリスクがあります。そのリスクを回避するため、ファクタリング会社に「保証料」のような形で手数料を支払い、いざというときに(回収できなかった時に)ファクタリング会社が債権者(申込人)に保証額(通常100%、満額)を支払います。
相手から回収できなくなったときに代わりにファクタリング会社が支払ってくれます。信用保証協会や保険会社のようなイメージです。
保証ファクタリングを依頼する際には、売掛先(債務者、売掛金を支払う側)の与信審査が行われます。信用力や返済能力などを調べるため、クライアントの与信・債権管理や貸し倒れ回避などリスク管理を保証ファクタリングの立て付けでアウトソーシングできるのが大きな強みです。
当然、リスクが大きいと判断した場合、ファクタリング手数料は高くなります。
保証ファクタリングによって売掛金買取が発生するのは、売掛先(債務者)が
・破産や会社更生の手続きの開始
・特別清算の手続き開始
・民事再生などの法的倒産の手続きを申し立てる
と言った倒産や経営破綻を起こした場合だけでなく、
・手形交換所の取引停止処分を受けた
・手形や小切手の不渡りを起こした
と言った「事実上倒産」と市場からいなされるケースや
・任意整理着手の公表
・すべての営業の中止
・本店事務所の閉店、閉鎖
など「夜逃げ」に該当するようなケースでも保証ファクタリングの適用となります。実際に法的に倒産したかどうかではなく、そのまま連絡が取れず消えてしまうようなクライアントとの取り引きにもこの制度を使えます。
保証ファクタリングは大手一部上場企業のファクタリング会社が行っていて、多額になる取引や大口事業などのリスクヘッジの手段として広く利用されています。
これは資金繰りに困った債権者の窮余の策ではなく、普通に興行保険や事業保険などと同様の使い方をしていますので、保証ファクタリングを依頼する=経営的にヤバいではないので、一括ファクタリングとは全く異なると思ってください。
手数料率は売掛債権金額の2%~8%が相場になっています。
保証ファクタリングのメリット
保証ファクタリングを行うことで、債権者(申込者)側に大きなメリットがあります。このメリットがあるから、高い保証料を払ってでも保証ファクタリングを行う価値があります。
貸し倒れリスクの回避
保証ファクタリングを利用することで、売掛先の倒産、事実上倒産、夜逃げ等にかからわず、回収することが可能です。
貸し倒れリスクを回避で、売掛債権が不良債権化してしまうのを防ぐことができます。
与信管理のアウトソース
通常、取引先、クライアントの信用調査、与信管理は自分たちで金をかけて行うことになりますが、保証ファクタリングの枠組みを使えば、実績とノウハウのあるファクタリング会社が、売掛先の与信管理を行ってくれます。
与信管理をアウトソーシングできることになり、自社の手間が大きく減ります。
売掛先に知られない
売掛先の債務者を巻き込むという意味では3社間ファクタリングを思い出しますが、3社間ファクタリングはファクタリングをしていることの了解を売掛先にとりますが、保証ファクタリングの場合、信用調査は相手に知られないように行われます。
したがって売掛先にバレず、これまでのビジネス関係が気まずくなったり、不審がられたりすることはありません。それでいて、相手の経営状態を調査してくれてそれがファクタリング手数料として含まれるというわけです。
国からの助成がある場合も弱い立場の事業者を守るために国、行政が保証ファクタリングの利用をサポートする制度を設けている業種もあります。
例えば、建設業向けの助成事業に「下請債権保全支援事業(債権支払保証事業)」というものがあります。
この制度は、常に報酬不払いなど弱い立場に置かれがちな、建設業下請けを守るため、保証ファクタリングを利用しやすいよう、行政が保証料負担への一定程度の助成を行うというものです。
「ファクタリングは法が未整備だから、国は守ってくれない」という意見がありますが、保証ファクタリングについては、ある程度サポートしようとする動きがあります。それがこの制度です。
大手が提供している
保証ファクタリングを実施しているのは、大手金融機関や大手金融機関系のファクタリング会社のみであり信用できます。
よく言われる「聞いたこともない会社がファクタリングに参入し、高額な手数料を集めている」というイメージは、保証ファクタリングに限っては該当せず、信頼も実績も社会的に求められている会社が保証ファクタリングを実施しているということになります。
保証ファクタリングのデメリット
保証ファクタリングにはデメリットもあります。このデメリットとメリットを比較し、実施を検討することになります。
保証料がかかる
保証ファクタリングの保証料は、ファクタリングの実行(売掛先の倒産や不渡り)にかかわらず支払います。金額は売掛金の2%~8%が相場であり、売掛先の与信状況が悪ければ%が上がります。
要は保険料として一定額を売掛金が発生するごとに支払わなければならないということです。資金に困って売掛債権を譲渡するときだけ保証料がかかる通常のファクタリングとは違うシステムになっています。
利用できない場合がある
保証ファクタリングも「保険」ですので、明らかに倒産リスクが高い会社や、反社会的要素が高い会社が売掛先の場合、ファクタリング会社のリスクヘッジとして、ファクタリング契約を断られる可能性があります。保証ファクタリングを利用できないケースがあります。
あくまで万が一の「保険」としての保証ファクタリングですので、その可能性が「十が一」「四が一」では保険としての意味をなさなくなってしまいます。回収不能債権リスクをファクタリング会社が被るのはその可能性が低い場合のみなのです。
高額な取引が必要
上述のように保証ファクタリングはファクタリングの実行にかかわらず保証料が発生します。つまり薄利多売のビジネスモデルでは、保証ファクタリングを行うメリットはないのです。
ファクタリング会社も保証ファクタリング契約にあたっては、売掛先の与信調査などを行うため、あまり売掛金が安い債権は、信用調査経費だけで赤字になってしまいます。
したがって、保証ファクタリングの対象となる売掛金は最低でも「100万円以上」とするファクタリング会社が多いです。会社によって最低金額は異なりますが、ある程度高額な取引にのみファクタリング契約がかけられることは一致しています。
保証ファクタリングの流れ
保証ファクタリング契約、利用の大きな流れは以下になります。
<支払い前>
1.債権者が保証ファクタリングをファクタリング会社に申し込む
2.ファクタリング会社が債務者(支払い義務がある会社)の与信調査を行う
ここで債務者(売掛先)が本当に支払い可能なのか、信用調査を行います。ファクタリングの場合債権者(お金が欲しい人)の与信調査は行いませんが、この場合は債務者の信用調査を行うわけです。
3.支払い可能と判断→ファクタリング契約の締結
3’.債務者の経営に問題がありリスクが高い→ファクタリング契約ができない(この時点で売掛先はヤバいと判断できる)
<支払期日(売掛金回収期日)到来>
4.支払いがなされた→ファクタリング会社に保証料(手数料)を支払い一件落着
4’.倒産等で支払いができない→ファクタリング会社が売掛金相当分を債権者に支払う
こういう流れになります。
取引先が倒産した場合
取引先が倒産、ないし以下の状況に陥った場合、保証ファクタリングが実行され、債権者に【売掛金-手数料】(保険金のように保証された金額の範囲内で売掛債権の未払い分)がファクタリング会社から支払われます。
・破産や会社更生の手続きの開始 ・特別清算の手続き開始 ・民事再生などの法的倒産の手続きを申し立てる ・手形交換所の取引停止処分を受けた ・手形や小切手の不渡りを起こした ・任意整理着手の公表 ・すべての営業の中止 ・本店事務所の閉店、閉鎖 |
ファクタリング会社は少しでも売掛債権を回収できるよう、債務者に対して法的な清算、改修手続きなどを行いますが、ここから先は債権者の方は関係ないステージになります。
債権者は保証ファクタリングによって、売掛金の一部を手にすることができ終了とあります。
保証ファクタリングが向いている会社
保証ファクタリングはすべての会社におすすめできるものではなく、向いている会社が実施を検討すべきものです。売掛金額が少ない場合、薄利多売の場合は保証ファクタリングの手数料などを考えるとコスパが悪いのです。
保証ファクタリングが向いている会社は以下になります。
与信管理をアウトソースしたい
売掛先の信用調査、与信管理は保証ファクタリングに不可欠なもので、付随サービスとしてデフォルトでついてきます。
与信調査や情報収取を自社で行おうとすると、膨大なコストや手間が発生するため、保証ファクタリングのついでにアウトソーシングしてしまいましょう。
保証ファクタリングができる会社は大手金融機関などだけなので、その与信管理能力は信用できます。
売掛金の回収期間が長い
売掛金の回収サイトが短ければ、売掛先の経営状態などが比較的認識しやすく、危ない取引を回避できます。問題はサイトが2か月や3か月の場合、突発的な要素を予測できず、取引したときは問題なさそうだったのに、状況が急変し回収不能になってしまうリスクです。
売掛金の回収期間(サイト)が長い場合、突発的なリスクヘッジのため、保証ファクタリングを行う意義はあります。
取引先工場の火災や大規模事故などはサイトが短くても突発的に置きますが、サイトが長ければ販売から売掛金の回収までに遭遇する可能性も上がります。
もちろん、サイトを短くできないか交渉も合わせて行うべきです。
売掛先が少ない
売掛先が少ないということは、販売先のリスクを分散していないことなので、1社がつぶれると自社への影響が大きくなります。販売先の開拓も重要ですが、当面のリスクヘッジとして、保証ファクタリングでその会社がダメになった時の対応を保証ファクタリングで行います。
まとめ:保証ファクタリングは貸し倒れリスクの回避が可能
保証ファクタリングは通常のファクタリングと違い、債権者の経営悪化のリスクヘッジではなく、債務者の経営悪化による貸し倒れリスクの回避を目的としていて、実際にそれが可能です。
手数料も、売掛先の与信状況によっては高くなるので、行う対象をよく見極めてください。薄利多売のビジネスモデルでは保証ファクタリングはいらないかもしれません。逆に少数の売掛先とビジネスしている場合は、さまざまなリスクを回避するためにも、保証ファクタリングの契約を考えてもいいでしょう。
メリットとデメリットを考慮し、効果があると判断したら保険の意味で保証ファクタリングを行うことをおすすめします。
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