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ファクタリングの基礎知識

国際ファクタリングとは?仕組みやメリットとともに解説

ファクタリングは資金調達に困った事業者が、自身の売掛債権を譲渡することで現金化する手法で、ファクタリングに手を出す時点で経営が相当厳しい、というイメージをお持ちの方もいらっしゃるはずです。

しかし、ファクタリングは必ずしも窮余の策としての債権現金化だけではない利用法もあります。経営が安定していて、資金繰りに困っていない事業者でもファクタリングをすることがあります。

今回紹介する「国際ファクタリング」もそうした資金繰りに困った事業者が行うファクタリングではない用途のファクタリングです。特に相手の信用情報が不透明な外国の企業との取引のリスクヘッジとして用いられます。

国際ファクタリングとは?

国際ファクタリングとは、海外に商品を輸出しているメーカーや商社が、取引先企業から売上を確実に回収するためのシステムがです。

資金需要に困っている会社が資金調達の手段として、売掛債権をファクタリング会社に譲渡するのではなく、日本企業と比べて信用度が低い、よくわからない企業もある海外に輸出するときにリスク回避の手段として利用します。

国際ファクタリングの流れ

国際ファクタリングは輸出業者→国内のファクタリング会社→国外、海外のファクタリング会社→輸入業者の流れで行います。

つまり、3社間ファクタリング以上の関係者がいる実質「4社間ファクタリング」になります。

まず、輸入業者(バイヤー、外国企業)に対して、現地のファクタリング会社が連絡して、ファクタリングを行う旨の了解を得ます。

また、現地のファクタリング会社が輸入業者の信用度調査も併せて行います。

この信用調査で問題がありそう、ということになれば、輸出業者(依頼主)に注意情報が提供されます。本当にこの輸入業者(バイヤー)と取引していいのかが実際の取引前に判断できます。

依頼主がファクタリングを依頼する際には、インボイス(請求書)に加えて、海外に出荷していることを証明する書類(B/L=船荷証券)の提出のみでOKで、非常に簡便な手続きの中でファクタリング契約ができます。

依頼主が国内のファクタリング会社にファクタリングによって資金回収を依頼すると、輸入業者→外国のファクタリング会社→国内のファクタリング会社→依頼主の流れで資金が回収できます。

これにより、よくわからない外国の会社との取引において支払い不能になるリスクを回避できます。

信用状(L/C)との違い

国際ファクタリングと似たシステムに「信用状取引(L/C)」があります。信用状とは、輸出代金を回収する際には、輸出国の銀行の信用状「L/C」を手に入れた後取引を行い、信用状取引とも呼ばれます。

信用状があると、支払いがなされない場合、信用状を発行した銀行等から保証を受けられ、やはりリスクヘッジになります。

国際ファクタリングと信用状の違いは大きく分けて、以下の4点になります。

国際ファクタリング信用状
手数料高い(月利0.7%~2%)安い(年利0.5%~1%)
時間かからない信用状の送付に時間がかかる
必要書類簡便厳格で不備があると拒否される
銀行の審査簡易な審査で早い信用状開設まで1か月

大きな違いは、国際ファクタリングの場合手数料は多少かかるものの、信用状取引と比較し、何事も迅速に、スムーズに代金の回収まで進めます。信用状取引は低コストなのですが、時間や書類が厳格で、少しでも瑕疵があると取引できません。

とにかく手数料が安い信用状取引か、速さ、簡便さ重視の国際ファクタリングか、の比較、選択になります。

国際ファクタリングのメリット

従来の信用状取引にはないメリットがあるからこそ国際ファクタリングが注目されています。国際ファクタリングのメリットは大きく分けて以下の4点になります。

売掛債権が100%保証される

国際ファクタリングは売掛債権の100%をファクタリングの仕組みで回収できます。従来のファクタリングは「掛け目」という買取上限(80%~90%)がありましたが、国際ファクタリングは売掛債権100%+手数料を支払っての資金回収になります。

リスクヘッジのため手数料を支払うことで、信用度に不安がある外国企業への売掛債権を全額回収できる仕組みなので、とてもありがたいシステムになります。

信用状を開設解説する必要がない

従来の信用状取引の場合、輸出会社、輸入会社双方の信用度が審査され、手続き書類も複雑で、信用情報に問題があった場合、取引ができないこともありました。

しかし、国際ファクタリングの場合、ファクタリングの枠組み、つまり有効な請求書、売掛債権があるかどうかが重視されるので、信用度で少々不安があり、信用状開設が怪しい会社との取引のリスクヘッジ手段となりえ得ます。

書類送付による遅延が起きない

信用状(L/C)取引の場合、船積書類(B/L等)について、信用状を発行している銀行を経由して送付する必要があり、タイムラグが発生します。何か事故や災害があれば、書類到着が大きく遅れてしまいます。

しかし国際ファクタリングの場合、書類のやり取りは最小限であり、迅速なファクタリング申請、現金化が可能です。

プロに信用調査を委託できる

国際ファクタリングを申し込むと、現地のファクタリング会社が輸入企業の信用調査を行います。現地だからわかる情報もあり、日本のファクタリング会社が信用調査を行うよりも確度が高い与信管理が可能になります。

現地のファクタリング会社も信用調査のプロフェッショナルであり、そのクオリティについては安心できます。

国際ファクタリングのデメリット

一方で、国際ファクタリングを使うことのデメリットもあります。もしデメリットの方が大きいならば、従来の信用状取引を使うのも1つの方法となります。デメリットは以下の3点になります。

手数料が高い

信用状取引と国際ファクタリングを比べると、手数料は圧倒的に国際ファクタリングの方が高くなります。

国際ファクタリングの保証料は月単位で「0.7~2.0%」

信用状取引の保証料は「年単位で0.5~1.0%」(月換算で約0.04~0.08%)。

つまり、信用状取引の手数料は月換算で最小0.04%、それに対して国際ファクタリングの手数料は月換算で最大2%。50倍の開きがあります。

国際ファクタリングの手数料は信用状取引と比較して数十倍高い、これは大きなデメリットになるでしょう。

利用できる会社が少ない

通常のファクタリングを取り扱う会社は日本国内に数百社あると言われていますが、その中でも国際ファクタリングの契約ができるのはメガバンク系の3社のみになります(後述)。

信用調査に時間がかかる

国際ファクタリングは迅速にできるのが売りですが、それ以前の相手方企業(輸入企業)の信用調査には1カ月弱の時間がかかります。掛け目100%で保証するわけで、相手方企業の信用情報については最初に時間をかけて厳格に調べます。

ファクタリング契約の最初のみ結構時間がかかるとイメージしてください。

国際ファクタリングの利用が適する状況

信用状取引ではなく国際ファクタリングが適している状況があります。これらの場合、国際ファクタリングの利用を前向きに検討してみてください。

L/Cの開設ができない場合

L/C(信用状取引)を始めるのは時間と多くの書類、複雑な手続きが必要です。信用状取引開始ができる企業は限られていて、中小企業などは不可能なケースもあります。

そうした海外の企業と取引する場合、リスクヘッジ方法として国際ファクタリングを選択せざるを得ない状況になります。

与信管理をアウトソーシングして簡素化したい場合

与信管理を自分たち(あるいは専門の調査会社)に依頼するのはなかなか大変です。しかし、国際ファクタリングを利用すれば、最初の「オプション」として相手先の信用調査がついてきます。

信用調査は現地の会社が行うため、情報の確度も高く、安心して与信管理をアウトソーシングできます。

海外販路を視野に入れている場合

1社、2社であれば従来の信用状取引でもよいかもしれませんが、積極的に海外進出をして販路拡大を狙っている場合、機動的に資金回収ができる国際ファクタリングの手法を取ることで、万が一のリスクに備えることができます。

現地企業による信用調査や素早い現金化手続きなど、使い勝手が良いので、海外でさまざまな事業を展開したい場合、国際ファクタリングは大きな武器になります。

国際ファクタリングを利用する際の注意点

国際ファクタリングのデメリット以外にも注意していただきたい点があります。これらについてはあらかじめ押さえておいてください。

保証期間が短い

国際ファクタリングもファクタリングですので、請求書の請求期限、支払いサイト内での保証になります。

支払いサイト180日の取引で、振り込みがなく、190日目で慌てて国際ファクタリングを申し込んでも、期限の過ぎた請求書を買い取ることはできません。

生産遅延や船積み遅延など問題が発生し、輸入業者からの回収金額が債権買取金額に満たない場合はファクタリング会社に対し輸出業者が差額を負担しなければなりません。

例外的に支払いが保証されない場合がある

保険と同様、免責される場合があります。取引先企業の倒産などで支払いできない場合、売掛債権が保証されますが、相手国で災害や戦争、テロなどが起きて支払いどころではなくなった場合、国際ファクタリングの対象外であり、資金を回収できません。

国際ファクタリングに対応している企業3選

上述のように国際ファクタリングを実施している会社は非常に少なく、実質的にメガバンク系の以下の3社になります。ファクタリング会社というよりも銀行ですが、それだけ国際的な信用力がある会社でないとできないファクタリングということの証左です。

三菱UFJファクター

三菱UFJ銀行系のファクタリング会社です。三菱UFJ銀行の子会社で、国際的な信用度はダントツです。

信用調査費:1バイヤーにつき一律1万円

保証料率:インボイス金額に対する所定料率(非公開。最低料金は1万円)

みずほファクター

みずほフィナンシャルグループのファクタリング会社です。国際ファクタリングを行えますが、利用可能国が限られています。北米、欧州、アジアの安定国、オセアニア、一部中東国のみ国際ファクタリングが可能です。

信用調査費:1バイヤーにつき最大3万円(国によって変動)

保証料率:インボイス金額に対する所定料率(非公開。最低料金は1万円)

SMBCファイナンスサービス

三井住友銀行の子会社です。公開されている情報が少なく、要問合せになりますが、上記2社との違いとして「カントリーリスク」(政治、経済、社会情勢などの変化に起因するリスク)も保証の対象になります。

デモや現地政権の都合で「日本製品ボイコット。不払い運動」などが起きても、ここならばファクタリングの対象になります。

まとめ:国際ファクタリングの仕組みを理解して、国際取引のリスクを回避しよう

国際ファクタリングは従来のファクタリングとは異なり、外国の取引先の支払い不能リスクに対する保険のような使い方をします。

信用調査も合わせて行うので、外国での新規開拓をする場合、安全性が担保されます。手数料率は信用状取引と比べると高いですが、「保険」と割り切ればそこまででもありません。

国際情勢や文化慣習の違いは思わぬリスクをもたらすため、国際ファクタリングを使いこなすことで、安心を得られます。

ぜひ国際ファクタリングの仕組みを理解していただき、リスクヘッジと販路開拓につなげてください。

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