診療報酬債権ファクタリングとは?メリットや仕組みを解説
病院や調剤薬局でファクタリングを利用できることをご存じですか?
医療機関の売上は「診療報酬」といって公的な機関に請求して、報酬が入金されるまで2ヵ月近くかかる流れとなっています。
ここでは、診療報酬ファクタリングについて解説します。
診療ファクタリングの仕組み、診療報酬の発生から受け取りまでの期間や流れ、診療報酬ファクタリングを利用するに際してのメリット及びデメリットについて説明します。
診療報酬債権ファクタリングとは
診療報酬債権ファクタリングとは、病院や調剤薬局など診療報酬を受け取る医療機関がファクタリング会社へ売掛金(診療報酬債権)を売却することにより診療報酬債権を早期に現金化を図る資金調達手段のひとつです。
診療報酬ファクタリングの仕組み
診療報酬とは、医療機関に対し、医療行為(診察、治療、処方など)の対価として支払われる費用のことをいいます。そのうち、自己負担分(原則3割)として患者から、残りを加入している医療保険者(社会保険診療報酬支払基金または国民健康保険団体連合会)が医療機関に支払うこととなっています。
診療報酬ファクタリングの仕組みは、医療機関が保有する診療報酬をファクタリング会社と契約することにより売却(または債権譲渡)し、医療機関はファクタリング会社より手数料を差し引かれた金額を交付されるしくみであります。
これにより、医療機関は診療報酬が入金されるまでにファクタリング会社に診療報酬を売却(または債権譲渡)することにより資金調達をすることができる仕組みのことをいいます。
受け取りまでの期間
通常医療機関が診察等を行って、診療報酬として受け取るまでどれくらいかかるのでしょうか。
- 一医療機関は1か月の診療内容を集約した保険請求を行うための診療報酬明細書(レセプト)を翌月10日までに作成し社会保険診療報酬支払基金または国民健康保険団体連合会へ提出。
- 社会保険診療報酬支払基金または国民健康保険団体連合会は受け付けたレセプトを事務点検及び診療内容をチェックし、事務点検及び審査事務が終了したレセプトは、審査委員会において再度審査。
- 審査委員会での審査結果や事務点検などの請求点数に増減があった場合、医療機関に連絡し、医療費を保険者及び医療機関別に計算し、請求関係帳票及び支払関係帳票を作成。
- 医療機関への医療費の支払は、計算センターで作成された医療機関ごとの総括票(支払額のデータ)の金額と医療機関の請求額とを突合するなどの確認を行なった後、 診療した月の翌々月の原則21日までに医療機関の指定する銀行口座に振込。
(参考:社会保険診療報酬支払基金「診療報酬の審査・支払業務 -業務の流れ-」)
(一部加工)
1ヵ月間の診療内容を翌月10日までに社会保険診療報酬支払基金または国民健康保険団体連合会へ提出し、原則翌々月の21日までに入金となります。
例えば、3月中に診察した報酬は翌々月の21日以降、つまり5月21日以降に入金となります。
自己負担分が原則3割負担であることより、医療機関の月の診療報酬のおよそ7割が2ヵ月近く先に受け取ることになります。
利用できる人
診療報酬ファクタリングは一般のファクタリングと異なるため、診療報酬を受けている
医療関係の事業者や法人となります。
- 薬局を経営する事業者
- 開業医
- 病院やクリニックを経営する事業者
などです。
診療報酬ファクタリングのメリット
医療機関が診療報酬ファクタリングを利用することはどのようなメリットがあるのでしょうか。主な2点について説明します。
手数料が安い
ファクタリングの手数料は一般的に、
- 2社間ファクタリング:10%~20%
- 3社間ファクタリング:2%~9%
が相場とされており、診療報酬ファクタリングは通常3社間ファクタリングで契約することが大半であるので手数料が安くなります。
ファクタリング会社は申込人より売掛先を中心に審査します。診療報酬を支払うのは社会保険診療報酬支払基金、または国民健康保険団体連合会という公的な機関であるため未回収リスクがほとんどありません。ファクタリング会社は売掛先の信用リスクを勘案して手数料を設定するので、診療報酬ファクタリングは、3社間ファクタリングでかつ、売掛先に未回収リスクがほとんどないため、手数料が安くなります。
>>ファクタリングの手数料相場は?手数料を決める要因と内訳を紹介
債権譲渡通知のリスクがない
売掛先が国民健康保険団体連合会などといった公的期間であり、通常のファクタリングのように売掛先が一般企業ではないので、回収のリスクがほとんどありません。ですので、債権譲渡によるリスクがほぼないことが診療報酬ファクタリングのメリットといえます。
一般的に、3社間ファクタリングのデメリットのひとつとして、申込人がファクタリングを利用していることが売掛先に知られることがあります。
つまり、申込人がファクタリングを利用していることはすなわち資金繰りに窮しているのでは、と売掛先が疑問をもつ可能性があり、今後において申込人と売掛先の間の信頼関係がゆらぎかねない恐れがあります。
しかしながら、売掛先は社会保険診療報酬支払基金、または国民健康保険団体連合会という公的期間であるため、申込人はファクタリングの利用により売掛先との関係悪化を考える必要がないことがメリットであるといえます。
診療報酬ファクタリングのデメリット
診療報酬ファクタリングのデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
取り扱い会社が少ない
診療報酬ファクタリングを取り扱っている会社が少ない点があります。
どうして診療報酬ファクタリングを取り扱っている会社が少ないのでしょうか。
それは、手数料の安さと売掛先の健全さに起因しています。
売掛先が健全であればファクタリング会社は未回収リスクを回避できるため都合がいいのでは、と思われるかもしれません。
確かに、回収の心配がほとんどないということはファクタリング会社にとってはメリットであることは間違いないのですが、診療報酬ファクタリングはほとんどが3社間ファクタリングであるため、売掛先の健全さとを鑑み手数料が抑えられるといった点にあります。
また、診療報酬ファクタリングの売掛金は高額であることが多いため、ファクタリング会社は診療報酬ファクタリングに特化するより、手数料収入を含めニーズのある多くの顧客に利用されることを優先してファクタリングを行うことを第一に考えているため、結果として取り扱う会社が少ないということになります。
診療報酬の全てが通るとは限らない
前述の通り、医療機関は診療報酬明細書(レセプト)を作成し、社会保険診療報酬支払基金または国民健康保険団体連合会へ提出します。その後、審査があるのですが、すべてが通るとは限らないため、ファクタリング会社は、申込金額の7〜8割を買取ります。そのため、医療機関にとって資金調達金額が減額される可能性があります。
利用が慢性的になる恐れがある
医療機関の売掛先は社会保険診療報酬支払基金または国民健康保険団体連合会であり、診療報酬を受け取るまで2ヵ月近くかかります。
一般的に、企業は売掛債権が現金化されるまでの期間は取引先によってさまざまです。取引先との力関係によっては早期回収も可能です。そのため、企業は資金繰りの改善を図ることができます。
しかしながら、医療機関においては売掛先、及び資金化される期間が決まっているので資金繰りの改善が不可能です。一度運転資金として利用すれば継続的に使うことにもなりかねません。
まとめ:医療機関の資金繰り改善には診療報酬ファクタリングの活用がおすすめ
診療報酬ファクタリングは医療機関が利用できるファクタリングです。3社間ファクタリングが主流となっているので、手数料が安いのが特徴です。また売掛先であるのが公的機関であることよりファクタリング会社にとっても未回収の恐れがほとんどないこともメリットであります。
ただ、診療報酬ファクタリングを取り扱っている会社が少ないことがデメリットであるため、利用を検討される医療機関は注意が必要です。
診療報酬が発生し、回収まで2ヵ月近くかかるため、医療機関事業者は資金繰りに悩むことがあるかもしれません。その時は診療報酬ファクタリングを活用し資金調達を上手に行うことをおすすめします。
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