ファクタリングは違法?法律的根拠と悪徳業者の見抜き方を解説
売掛金の売却により資金の調達が可能であるファクタリングは事業者間においては大変重宝されています。とはいえ、ファクタリングは違法ではないのか、と思われている方もすくなくありません。確かに、金融機関での融資などとはシステムが異なるので余計にそう感じることもうなずけます。加えて、金融庁や消費者庁よりファクタリングに関する注意喚起をされていることは事実です。
しかしファクタリングは違法ではありません。
ここでは、ファクタリングが合法であることについて解説致します。
主な取引形態である2社間ファクタリング、3社間ファクタリングの法的根拠に関して解説し、また、給与ファクタリングに代表される違法なファクタリング事例について、そして悪徳業者の見分け方についても説明します。
この記事を読むことで、ファクタリングについて正しく理解することができますので最後までお読みください。
ファクタリングの法的根拠
巷では、ファクタリングは違法などといわれたりするのですが、実際はどうなのでしょうか。法律に照らし合わせて検証します。
2社間ファクタリング
2社間ファクタリングとは、売掛金を保有している申込人がファクタリング会社に売掛金を売却して資金調達を行う方法をいいます。つまり、申込人が売掛金を売却することで、対価としてファクタリング会社より金銭を受け取ることとなりますので、「売買」にあたります。
売買とは、モノを売却して対価として金銭を受け取る契約をいいます。
民法第555条には売買について記されております。
(売買)
第五百五十五条 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
ですので、2社間ファクタリングにおいて、法律的に何ら抵触することはありません。
3社間ファクタリング
3社間ファクタリングとは、ファクタリング会社と申込人、および売掛先との間で交わす
ファクタリングのことをいいます。
流れとして、
- 売掛金を有する申込人は売掛先からファクタリングを行うに際しての承諾を得る
- 申込人はファクタリング会社と債権譲渡契約を交わす
- ファクタリング会社は手数料を差し引いた金額を申込人に資金交付
- ファクタリング会社は支払期日に売掛先より売掛金を回収
となります。
このとき、2. で申込人はファクタリング会社へ債権譲渡していますが、この債権譲渡に関しては民法第466条に記されています。
(債権の譲渡性)
第四百六十六条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
しかしながら、この債権譲渡契約は申込人とファクタリング会社との間では有効であり、また売掛先には事前に承諾を得ているものの、第三者に対しては有効でありません。
そこで、申込人は第三者の対抗要件として売掛先に債権譲渡の通知を確定日付のある証書にて通知を行います。
この第三者への対抗要件については民法467条に記載されています。
(債権の譲渡の対抗要件)
第四百六十七条 債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。
以上より、3社間ファクタリングは民法466条、467条に則っての取引であるので、合法であるといえます。
>>3社間ファクタリングとは?仕組みやメリットデメリットに解説
違法なファクタリングの事例
ファクタリング取引は合法なものであることは理解していただけたと思いますが、違法な取引が行われ摘発されていることも事実です。
ここでは、違法なファクタリングの事例をあげていきます。
給与ファクタリング
給与ファクタリングとは、個人が勤務先に対して保有する給与(賃金債権)をファクタリング会社は一定の手数料を徴収して買い取って資金交付して後日利用者個人より回収することをいいます。
つまり、給与ファクタリングの流れは、
- 個人がファクタリング会社に給与債権を売却
- ファクタリング会社が手数料を差し引いて個人に資金交付
- 勤務先が個人へ給与を支払う
- 個人がファクタリング会社へ給与を入金
となります。
では、どうして給与ファクタリングは違法であるのでしょうか。
2020年(令和2年)3月24日、東京地裁で給与ファクタリングについての判決がありました。判決は給与ファクタリングは違法という内容でした。
違法という判断に至った理由として、給与債権の法的性格があげられます。
給与債権についての法的性格として、
- 通貨払いの原則
- 直接払いの原則
- 全額払いの原則
- 毎月1回以上の定期払いの原則
があります。
特に、給与ファクタリングにおいて、「直接払いの原則」に問題があったということです。
直接払いの原則とは、労働者本人に対してしか給与は支払えないという原則です。
つまり、給与ファクタリングによって給与債権が譲渡されたとしても、給与は労働者本人にしか支払えないということです。
ですので、給与ファクタリングの流れは、先ほど示した
- 個人がファクタリング会社に給与債権を売却
- ファクタリング会社が手数料を差し引いて個人に資金交付
- 勤務先が個人へ給与を支払う
- 個人がファクタリング会社へ給与を入金
ですが、裁判所は、
- 個人がファクタリング会社に給与債権を担保として消費貸借契約を行う
- ファクタリング会社が個人に金銭を貸付
- 勤務先が個人へ給与を支払う
- 個人がファクタリング会社へ返済
と法的解釈したため、給与ファクタリングは実質的に貸付であり、貸金業法や出資法の適用対象であると判断しました。
ですので、給与ファクタリングを行う業者は貸金業の認可が必要となり、認可を受けずに行っている給与ファクタリングは違法となります。
参考:川上・吉江法律事務所「給与ファクタリングが貸付であると判断した裁判例(東京地裁令和2年3月24日判決)」
ファクタリングを装って貸付を行っている
ファクタリングは売掛金の売買により資金調達する方法で、申込人が売掛金を回収した後にファクタリング会社へ入金するしくみであります。しかしながら、売掛金の入金を先延ばしすることを認めるかわりに手数料を要求したり、あるいは、売掛金が回収できない場合の個人保証を求めたりする悪質な業者もあります。
申込人にとって資金交付を受けるためファクタリングと貸付との違いがなかなか見分けにくいことも事実です。ですので、そのようなケースに遭遇しないよう、ファクタリングの契約書の確認を十分に行う必要があります。特に、「買取」でなく「貸付」になっていないかにはしっかり注意してください。
売掛債権以外の担保を請求する
ファクタリング会社を名乗って、売掛金以外に担保を求めてくる業者が後を絶ちません。
ファクタリングは売掛金の買取ですので、申込人はファクタリング会社から売掛金以外を担保として請求されることはありません。
担保を求めて資金交付すれば貸付に該当し、貸金業とみなされます。
また、金銭消費貸借契約を交わさなければなりません。
繰り返しになりますが、ファクタリングにおいて担保は不要ですし、通常ファクタリング会社は担保を請求しませんのでご注意ください。
債権の一部のみを買い取る
売掛債権は性質上、分割して買い取ることができないため、一部を買い取るということは、残りの売掛債権を担保として貸付したと考えられ貸金業とみなされます。
もし、ファクタリング会社が貸金業登録をしていないのであれば、貸金業法違反となるので売掛金の一部のみの買取には注意が必要です。
分割返済が可能
申込人が売掛先より回収した売掛金は一括してファクタリング会社へ入金しなければならず、分割での入金はできません。
にもかかわらず、分割入金を提案する業者があります。
分割払いには分割の期間に利息が発生します。分割払いは貸金業者のみが認められており、貸金業者でないファクタリング会社は分割払いを認められておりません。
よって、売掛金入金で分割が可能と謳っている場合、悪質業者と疑う必要があります。
償還請求権がある
償還請求権とは、売掛先が支払えなくなった場合、ファクタリング会社が申込人へ回収不能となった売掛金を支払うように請求することをいいます。
しかしながら、ファクタリングにおいてはほとんどが償還請求権のない契約、つまり、「ノンリコース契約」であります。
そのため、ファクタリング会社は売掛先の信用リスクなどを勘案して手数料を利用者から徴収しています。にもかかわらず、償還請求権がある契約を利用先と交わした上で高額な手数料を取ることは通常ありえない取引ですので、償還請求権の文言が契約書に含まれている場合はファクタリング会社に説明を求めることをおすすめします。
悪徳業者の見抜き方
違法なファクタリング事例について解説しましたが、そのような事態に遭わないためには前もってファクタリング会社をチェックしておく必要があります。
ここでは悪徳業者であることを見抜く方法について説明します。
手数料が高い
ファクタリングファクタリングの手数料の相場は通常、
- 2社間ファクタリング:10%~20%
- 3社間ファクタリング:2%~9%
とされています。
とりわけ、2社間ファクタリングにおいて20%を超える手数料を求める業者は注意するのが無難です。なぜなら、ファクタリングそのものは貸金業ではないので20%超であっても問題ないのですが、比較されるものとして利息制限法があります。
利息制限法とは、貸金業などが貸付するときの上限金利を定めた法律です。
法律には、
- 借入額が10万円未満の場合…年20.0%
- 借入額が10万円以上100万円未満の場合…年18.0%
- 借入額が100万円以上の場合…年15.0%
と定められています。
ファクタリング会社も利息制限法をふまえた手数料設定をされているため、20%を大幅に超えている場合は悪質業者の可能性がありますので注意が必要です。
>>ファクタリングの手数料相場は?手数料を決める要因と内訳を紹介
契約書がない
通常、ファクタリング会社であれば契約内容に関して詳細に記された契約書が存在します。逆に悪質な業者であれば、そもそも契約書が存在していない場合があるので気をつけなければなりません。また、存在していても書かれている内容があいまいであったりします。
よって、契約書の有無に関しては十分確認することはもちろん、記載内容についても詳しく説明を受けることをおすすめします。
担当者の対応がおかしい
ファクタリング会社の利用が初めてであったりすると、審査でのヒアリングにかこつけて売掛金の買取以外の話を持ちかけてくる業者があります。
例えば担保や保証人を請求したりするケースです。
中には資金の貸付を提案したりする業者もあります。
ファクタリングは売掛金の売買のみの取引ですので、他に条件をつけたりすることはありません。よって申込人は保証や担保、貸付の要求などを行ってくる業者には注意しなければなりません。
継続的な取引を持ちかけられる
本来ファクタリングは、売掛金を売買した後に資金交付があり、売掛先より売掛金を回収しファクタリング会社へ入金をすれば交わしたファクタリング契約は終了となります。
にもかかわらず、売掛金回収後、新たに資金を交付して継続的な取引を要求する業者があります。この場合、貸付となりファクタリングではないので売掛金売買以外で資金交付をほのめかすような行為があれば注意を払うことが重要です。
まとめ:ファクタリングは違法ではないが悪徳業者には注意が必要
ファクタリングの法的根拠や違法事例、悪徳業者の見分け方について説明しました。
ファクタリングは民法における売買や債権譲渡にのっとって契約を交わすものであるため合法であります。
一方で、違法行為として、給与ファクタリングや、貸付、担保の請求、償還請求権などの違法行為について、そして、悪徳な業者の見分け方についての注意点に関しても解説しました。
何度も申し上げていますが、ファクタリングは違法ではありません。契約時に書かれている必要事項を把握し、悪徳業者にだまされないようファクタリングを利用されることを願っています。
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