給料ファクタリングとは?仕組みを理解して違法な業者に注意しよう
カードローンや消費者金融の利用に変わる新しい一時的な資金調達方法として「給料ファクタリング」(給与ファクタリング)という手法が認知されています。給料ファクタリングについては、何点か注意していただきたいこともあり、そうしないと法外な手数料を支払うことになります。
今回は、給料ファクタリングを安全、安心に利用するため、その仕組みについて解説します。
給料ファクタリングの仕組み
給料ファクタリングとは、「ご自身の給料を質に入れて前借りする方法」を想像するとわかりやすいです。
「お給料をもらう権利」を事前にファクタリング会社に買い取ってもらい、現金化し、給料日が来たらその給料をファクタリング会社に払い込みます。
会社員や雇用関係のあるアルバイトは毎月、一定の給与所得があり、その給料債権を、支払日(給料日)前にファクタリング会社に買い取ってもらい、対価として現金を手に入れます。
「給料の前借り」と最初に書きましたが、融資、借入ではありません。お金を借りるわけではなく「給料を給料日にもらう権利」(債権)を給料日前にファクタリング会社に買い取って現金化しています。融資ではなく、中古ゲームなどの買取に近い構図になります。
当然ですが、ファクタリング会社に買い取ってもらう金額は、実際の給料よりも安い金額となり、手数料も支払うことになります。
事例で見てみましょう。
Aさん 会社員 月給30万円 給料日毎月25日 B社 給料ファクタリングを行っている会社 3月上旬 お金が必要になるが手持ち現金がない 3月5日 給料ファクタリングを実施。ファクタリング会社に「25日に給料30万をもらう権利」を買い取ってもらう 3月5日 現金21万円(手数料率30%)を入手 3月25日 買い取り分21万円+手数料9万円(給料の30%)をB社に支払い |
このようなイメージになります。
給料ファクタリングの特徴
給料ファクタリングは他のファクタリングに比べて、特徴的なことがあります。以下を押さえておきましょう。
給料ファクタリングの手数料
給料ファクタリングの手数料は買い取り額の20%~40%が一般的です。20%であれば優良なファクタリング会社、40%以上だとかなりブラックな会社になります。可能な限り20%に近い給料ファクタリングを選ぶようにしましょう。
ちなみに他のファクタリングと比較します。
ファクタリングの種類 | 手数料率 |
---|---|
診療報酬ファクタリング(病院やクリニック向け) | 1%~5% |
3社間ファクタリング | 1%~9% |
2社間ファクタリング | 10%~20% |
給料ファクタリング | 20%~40% |
上の3つのファクタリングは会社や法人、個人事業主など事業者が行うファクタリングです。給料ファクタリングは会社員向けのファクタリングであり、手数料が大きく異なります。会社員向けの給料ファクタリングの手数料は高いのです。
在籍確認が必須
給料ファクタリング実施の際には、本当にその会社に在籍しているのか「在籍確認」が必要です。給与明細や社員証が本物かどうか確認するすべがなく、ひょっとするともう会社を辞めてしまっているかもしれません。
給料を確実にもらえなければ、ファクタリングの返済ができないので、ファクタリング会社は申込者(債権者)の会社への在籍確認を行います。ここは、消費者金融の借入などのケースと似ています。
在籍確認方法は、「保険会社のものですが〇〇さんいますか?」などとファクタリング会社とバレないように電話します。本人がその場にいなくてもよく、要は〇〇さんがその会社に在籍していることがわかればOKです。
「あいにく〇〇は営業に出ていまして・・・」という同僚の回答でも在籍確認OKです。
違法な給料ファクタリング
給料ファクタリングは他の事業者向けファクタリング以上に、違法とされるケースがあります。ファクタリングを規制する法律はないことが知られていますが、それでも他の民法や商法の一般条項で即アウトになるケースもあるのです。
貸金業者として登録がない業者
ファクタリングは、融資ではないので銀行法や貸金業法の適用を受けず、機動的な対応が可能というのがメリットに挙げられます。ファクタリングは融資ではなく債権譲渡だから、金融機関や貸金業の許可は不要とされています。
事業者向けのファクタリングならばそれでよいのですが、給料ファクタリングを行う業者については、貸金業者(消費者金融)の許可があるところにしてください。
裁判でも給料ファクタリングは実質融資と同じという判例が出てきています。
売掛債権の譲渡ではなく、ファクタリング業者が利用者(会社員)に対してお金を貸し、一定期間(多くの場合は短期間)の経過後に利用者が給料ファクタリング業者に対して利子をつけてお金を返す、という構図になっているため、債権譲渡ではなく融資の枠組みとなり、貸金業者許可が必要になります。
法律の範囲を超える金利
給料ファクタリングは実質融資の枠組みになるため、融資のかかわる法律の範囲を超えた金利は違法となる可能性があります。
融資金利を規定した法律として「利息制限法」と「出資法」があります。いずれも年利20%が上限となっており、給料ファクタリングの手数料を年利換算して20%を超えるとアウトです。
手数料率40%超えの給料ファクタリングの場合、年利換算で1000%を超えることもあります。闇金融などが甘く見えるほどの暴利になります。
給料ファクタリングのメリット
給料ファクタリングは手数料も高く、デメリットが多いように見えますが、実質融資とはいえ、法律で規定された融資ではないため、メリットも多いのです。それらについて解説します。
審査が甘い
銀行法や貸金業法の適用を受けないファクタリングなので、審査が緩い傾向にあります。債権譲渡の仕組みを取っており、本当にその会社に在籍し、確かに給料がもらえるならば、貸し倒れリスクが低く、高い手数料もあり、リスクヘッジできると思われていて、審査が甘くなっています。
個人信用情報に傷がつかない
融資の場合、事前に信用情報への照会がありますが、ファクタリングは債権譲渡なので、その過程がありません。つまり、過去に融資やクレジットカード返済で問題があった「信用情報ブラック」の人でも給料ファクタリングが利用できます。
即日でお金が手に入る
審査が緩いので、現金を手に入れるまでの期間も短く、最短で即日現金化が可能です。急にお金が必要でどうしようもない時に、給料ファクタリングは役立ちます。
勤務先に知られずに利用可能
事業者向けの3社間ファクタリングと異なり、お金を支払う側(勤務先)にバレずに利用できます。在籍確認がありますが、ファクタリング会社だと知られないように上手に行います。
給料未払いを回避できる
お金に困っての給料ファクタリングではなく、給料未払いへのリスクヘッジ手段にもなります。給料日に給料が支払われないリスクがある会社や、倒産しそうな会社に勤務している場合、事前に「給料を受け取る権利」をファクタリング会社に譲渡することで、手数料を引いた分を換金できます。
その後、倒産などで給料未払いになっても、支払われない(回収できない)のはファクタリング会社です。未払いリスクをファクタリング会社に移転できます。
総量規制の対象外
ファクタリングは消費者金融ではないので、年収の3倍までしか融資を受けられない「少量規制」の対象外となります。
給料ファクタリングのデメリット
一方で給料ファクタリングのデメリットも指摘されています。
手数料が高い
事業者向けのファクタリング(2社間ファクタリングや3社間ファクタリング)よりも手数料が高く、手数料率は約2倍になります。
それを年利換算すると100%超えることも珍しくありません。上述のように給料ファクタリングは実質融資なのですが。まだ厳格に利息制限法や出資法を適用できるまでには至っていません。
闇金業者が存在する
消費者金融の枠組みからも外れた、闇金融業者が給料ファクタリングを行っている可能性があります。
消費者金融は貸金業法でガチガチに規制されますが、ファクタリングはグレーゾーンも多く、そこに付け入るスキがあり、闇金業者が一部紛れ込んでいます。
依存性が高い
融資の場合は審査があり、それなりに自制心が働きます。それでも「カードローン破産」などに陥る人がいます。
給料ファクタリングは融資とは考えない人が多く、中古ゲームや本の買取感覚で利用する人がいます。給料日前にまとまったお金はほぼ無審査で手に入るのは、一部ユーザーには依存性を与えてしまいます。
給料ファクタリングが原因の破産に注意
給料ファクタリングは融資ではないので、返済不能になり破産するリスクは低いのでは?と思われるかもしれませんが、給料ファクタリングが原因で自己破産する人が増えています。どういうことに注意すればよいのでしょうか?
破産に追い込まれる理由
給料ファクタリングで破産に追い込まれる理由はその手数料の高さにあります。上の事例で考えると、「30万円の給料をもらう権利」を21万で買い取ってもらうと、結局9万円損します。21万円で1か月生活できればいいのですが、そうはならず、お金が足りなくなってしまいます。
そうなると、また給料ファクタリングでさらに給料の「前借り」を行うか、消費者金融から借りるか、当然、どんどん返済できず資金繰りが悪化し、最後はどうにもならなくなり破産します。
手数料が高すぎて、「給料を受け取る権利」を安売りせざるを得ないので、生活できなくなってしまうのです。
トラブルへの対処法
給料ファクタリングを行った結果、資金繰りが悪化し、返済できない、生活できない状況に陥ってしまった場合どうすればよいのでしょうか?トラブルへの対処法を考えます。
過払い金請求などの法的手段
年利換算20%を超える部分については、利息制限法や出資法違反で無効、過払い金請求できる可能性があります。20%を超えた手数料(≒金利)について取り返せる可能性があり、法的手段を行使できます。
弁護士に相談
かつての「過払い請求」は法律の改正もあって一段落しましたが、そのときに活躍した弁護士に依頼すれば、給料ファクタリングで払い過ぎていた手数料を取り返せるだけでなく、悪質なファクタリング会社との契約自体を無効化できるかもしれません。
違法な給料ファクタリング契約の無効を主張(貸金業法42条1項)
出資法の上限金利を超過する手数料の過払い金返還請求
不法原因給付(民法708条)として債権譲渡代金の返還不要
あたりが争点になります。
公的機関に相談
弁護士会の弁護士相談、自治体の無料相談、消費者センターなどに相談してもよいでしょう。ただし、実際に過払い請求したりファクタリング無効を主張したりする場合、個別に弁護士に依頼することになります。
初めから公的機関ではなく、過払い請求などに強い弁護士に相談してもいいでしょう。
まとめ:給料ファクタリングの仕組みを理解して、悪徳業者・闇金業者に注意しよう
給料ファクタリングそれ自体は違法ではありませんが、悪徳業者、闇金業者の付け入る隙が多い制度になっています。
実質高利の融資という現状を認識していただき、貸金業許可がありかつ適切な手数料のファクタリング会社を利用すれば、審査が緩い、金融ブラックOK、総量規制対象外などのメリットを享受できます。
ご利用は計画的、抑制的なのは大前提です。給料ファクタリングの仕組みが理解できれば、みなさんの生活を豊かにする選択肢となります。
この記事へのコメントはありません。